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2015年11月 4日 (水)

たとへば君

 買った本>

河野裕子・永田和宏 著

『たとへば君』

この前、東京へ行った時 代官山の書店【蔦屋書店】で
俳句の季語の本「季寄せ」を買った際、その隣に偶然あったこの本、、、

タイトルが目に入った時、すぐに頭に浮かんだのはこの短歌、

たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか

同窓の大先輩 あの、今は亡き(2010年 乳がんにて死去 享年64歳)
河野裕子女史の有名な短歌です。

この本には
女史と、ご主人である同じく歌人(細胞生物学者でもある)の永田和宏氏が
お互いのことを詠んだ相聞歌(ラブレターのような歌?)が収められており、

女史のエッセイを交えつつ二人の歌が
出会いから結婚、子育て、闘病、別れまで
人生を追って記され

短歌に詳しくない私が読んでも、ストレートに心に響き
しみじみとかみしめたくなる歌の数々に 胸を打たれました。

20151104

最後の句

手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が

には 涙があふれました。

また、永田和宏氏が挽歌で

あほやなあと笑ひのけぞりまた笑ふあなたの椅子にあなたがゐない

と詠み 

また あとがきでは
最近の一首として

わたくしは死んではいけないわたくしが死ぬときあなたがほんたうに死ぬ

死者は、生者の記憶のなかにしか生きられない、・・・・・・・中略
 それが彼女を生かしておく唯一の方法なのだと思う。

と書かれてました。

短歌という共通語があったからなのでしょうが
魂のレベルで共感しあった 素敵なご夫婦であったなぁと感じました。

いつもは 本屋さんでブックカバーを付けてもらわない私ですが
代官山店は 原研哉氏がロゴデザイン等を手がけているそうなので、、、
付けてもらったんだけど。。。

あまりのミーハーぶりに夫に呆れられた~~

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コメント

こんにちは。
職場に向かう通勤電車の中からです。
ガタンゴトンと揺られながら…。
私は読書家ではありませんが、
詩や短歌もわかりませんが、
『たとへば君』ちょっと、
手にとってみたくなりました。

★ターさんへ★

コメントありがとうございます!

『たとへば君』 私も短歌のことは分からないですが
ストレートに胸にしみいる本と思いましたよ。


「・・・・ガサっと落ち葉すうふやうに私をさらって行ってはくれぬか」
遠い昔、同じようなこと思ったことがありましたが、、、

こんな素敵な言葉で伝えられてたら 私の人生も変わっていたかしら???

、、、っな訳ないか。

「死者は、生者の記憶のなかにしか生きられない、、、」

金時君もターさんご夫婦の記憶の中で確かに生きていますよね。

 あまりの忙しさに、吾を忘れていた私でしたが、河野さんと永田氏の相聞歌は、とても大好きで、この記事のお蔭で、ふと歌が好きであるという吾を思い出すことが出来ました。
 私も、この、たとえば君~の詩が大好きです。この歌に出会うたびに、歌の世界は、本当に自由な世界なんだと、しみじみ思います。
この記事を見て、また引っ張り出してきて読んで、過去の自分にまた出会うことが出来ました。

 仕事人間だった私をいつも責めるのが、

 しんどがる 私を置いて 出でてゆく 雨の中に今日も 百の朝顔

 こんな歌を詠まれると、長い人生の後悔ばかりが、心を苛み続けます。朝顔を育てているとき、この歌をいつも思い出すので、ちくちくと痛みを感じつつ水をやります(笑)

 乳がんを患う前の、若かりし頃に詠んだ歌だったと記憶していますが・・・こんな歌に、女性というものの性の奥深さを感じ、与謝野晶子だけが特別の女性ではなかったのだと、何故か胸を撫でおろすような思いがしたのを覚えています。

 ブラウスの 中まで明るき 初夏の日に けぶれるごとき わが乳房あり

 また、立葵にはひどく思い入れがあったので、この歌も心に残っています。立葵という花の名前を心に刻んだ瞬間を思い出しました。その時私は、もし、また赤子に生まれ変わったとしても、立葵という花の名前だけは、絶対に忘れずにいたいと思ったのです。

 日に透きて 今年も咲ける 立葵 わたしはわたしを 憶えておかむ

 NHKの選者であったころは、よくテレビで拝見いたしました。永田氏の家族の歌の中では、精神に荒れる河野さんのことが書かれていますが、私はこれは抗がん剤の副作用だったのだと思っています。娘が嫁いだ先のお母様が、骨の癌にかかり3年間の闘病生活を送り、今は元気になられましたが、当時のことをよく覚えています。抗がん剤の副作用で酷く躁の状態になり、夜中の2時でも3時でも携帯が鳴り、ご主人や、ご友人のことをひどく悪しざまに話すことが、ほぼ毎日続いたことがあります。薬の副作用のせいだと、ご主人に聞いていたので、うんうんと聞いてあげることばかりでした。永田氏の歌を知った時、またNHKのドキュメントを見た時に、きっと薬のせいだったんだろうと感じたものです。

 この人を 殺してわれも 死ぬべしと 幾たび思ひ 幾たびを泣きし

 実際に、嫁ぎ先のご主人から、何度も私にそういう風に、告げられました。東京の帰りには、よく浜松に寄り、一緒にお酒を飲んだものです。そんなお母様も、見違えるように良くなり、抗がん剤を自分から変更を申し出たことにより、精神状態も、普通と変わらずに、とても落ち着くようになりました。

 おそらく、昭和を代表する歌人であろう河野裕子さんの、「森のやうに獣のやうに」は、まだ大学生だった若かった私に、女性というものの不思議さを教えてくれた本でした。当時、万葉集の相聞歌にはまっていた私には、とても頷ける歌ばかりだったと記憶しています。滋賀に移り住むようになり、河野さんが滋賀の石部で育ったことを知って、とても親近感が湧いたものです。長く忘れていましたが、河野さんは京都の名門女子大ご出身でした。長い小説も一つの作品であり、三十一文字の短歌もその人の、人となりを表している作品です。河野裕子さんは、忘れられない歌人です。

 とてもお茶目で、とてもキュートで、とても妖艶で、とても情熱的で、とても魅力的な河野裕子さんという女性です。


★歌姫さんへ★

私は短歌とはずっと無縁で、興味も無く暮らしてましたが、、、
歌姫さんは流石、詳しくてらっしゃる。

>とてもお茶目で、とてもキュートで、とても妖艶で、とても情熱的で、とても魅力的な河野裕子さんという女性です。

私も同感です。

可愛らしい歌もあれば、ドキドキするような歌もあるし
短歌がよく分からない私でも
ストレートに心に響き、共感できます。

「生まれながらの歌人」でしたね。

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